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アジャスターボルト使用時の注意点

アジャスターボルトの選定において、機械の重量から耐荷重を計算することは基本中の基本です。しかし、「カタログスペック通りの耐荷重の製品を選んだはずなのに、ボルトが曲がってしまった」「設置は完璧なはずなのに、装置が安定しない」といったトラブルは後を絶ちません。その原因の多くは、カタログスペックだけでは読み取れない、使用上の注意点が見落とされていることにあります。ここでは、アジャスターボルトの性能を100%引き出し、安全な設置を実現するために、設計者が必ず考慮すべき3つの重要なポイントを解説します。

注意点①:傾斜面への設置は、想定外の「曲げ応力」を発生させる

アジャスターボルトの耐荷重は、荷重がボルトの軸に対して垂直にかかることを前提としています。しかし、傾斜のある床面に、首振り機構のない通常のアジャスターボルトを設置すると、ボルトは地面に対して垂直ではなく、傾いた状態で荷重を支えることになります。この時、ボルトの軸には本来想定されていない「曲げ応力」が発生します。アジャスターボルトのねじ軸は、この横方向からの力には非常に弱く、カタログスペックの耐荷重を大幅に下回る荷重で、曲がったり、最悪の場合は折れたりする危険性があります。傾斜地での使用が避けられない場合は、必ずベース部分が傾きに追従する「首振り機構付き」の製品を選定してください。

注意点②:カタログスペックは「静荷重」。衝撃・動荷重を考慮する

カタログに記載されている耐荷重(kgfやN)は、基本的に「静荷重」、つまり静止した状態で、ゆっくりとかけられる荷重に対する強度を示しています。しかし、実際の工場では、装置のモーターが発する「振動(動荷重)」や、ワークを置く際の「衝撃(衝撃荷重)」が常に発生します。特に、衝撃荷重は、静荷重の数倍から数十倍の力を瞬間的にボルトに与えることがあります。例えば、耐荷重1000kgfのボルトでも、上から重量物を落とすような衝撃が加われば、簡単に破損する可能性があるのです。振動や衝撃が想定される装置には、十分な安全率を見込んだ、より高い耐荷重の製品を選定するか、防振ゴムを併用するといった配慮が不可欠です。

注意点③:機械フレームの「たわみ」を考慮した、脚の配置と本数

機械のフレーム(筐体)は、特に長尺の場合、それ自体の重さで中央部がわずかに「たわみ」ます。この「たわみ」を無視して、長いフレームの四隅にだけアジャスターボルトを設置すると、荷重が均等にかからず、両端のボルトに過大な負担が集中します。さらに、このフレームのたわみは、装置全体の水平を狂わせ、加工精度や測定精度に悪影響を及ぼす直接的な原因となります。重量がある、あるいは長さのある装置を設置する場合は、四隅だけでなく、必ずフレームの中央部にも「中間脚」としてアジャスターボルトを追加し、たわみを防ぐ設計を行ってください。

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